先日、開幕戦として和歌山県すさみ町へアオリイカを狙ってヤエン釣りに行ってきました。
今回は中潮の1日目という潮回り。
事前の天気予報では「晴れ・西風(緩い)」と報じられており、データ上では絶好の釣り日和を期待させる条件でした。
しかし、和歌山の海、特に南紀エリアは、予報通りの風波で収まるとは限りません。
風が止んでいても、遥か沖合の気象状況や前日までの天候が残す「ウネリ」が、地磯のコンディションを一変させることが多々あるからです。
自宅を朝9時に出発し、いつものように京奈和自動車道を使って南下します。(高速代節約w)
車を走らせながら頭の中でシミュレーションするのは、やはりポイントの選定について。
風向きは西。ならば背負える場所が良いが、和歌山ではそれもままならない。期待と少しの懸念を抱えながらハンドルを握る時間は、釣り人にとって最も想像力が働く時間かもしれません。
結果として、今回の釣行は「波気」との戦い、そして「月明かり」と「潮」の変化をどう読むかが釣果を分ける鍵となりました。
和歌山県すさみ地磯へのヤエン釣り釣行プロセス

朝9時、この冬初のヤエン釣りに期待と不安を胸に自宅を出発しました。予報では「西風3m~・晴れ」。
しかし、実際の風速や波は現地に行ってみないとわからないのが、この釣りの難しいところであり、面白いところでもあります。
特にすさみ周辺は黒潮の動向や前日までの天候が色濃く影響するため、現地に着くまでは気が抜けません。
頭の中にある数パターンの地磯候補から、今日のベストアンサーを導き出そうとシミュレーションを繰り返す。現場に立つ前のこの移動時間におけるアレコレもまた、釣行の重要な一部ですよね。
活きアジの調達

道中、昼食を済ませると同時に、釣りの生命線である「活きアジ」を14匹購入しました。
現状の和歌山ではアベレージサイズが6.700グラム位~1キロが上出来サイズとなるので、あまりにも豆アジでは私のヤエンでは釣りにくくなる。
価格や前情報を考慮しアジを仕入れました。
アオリイカの大きさとヤエンの大きさを考慮し、できるだけ大きめの個体を選んでもらうようお願いしましたが、小ぶりなので私のヤエンには合いません。けど、しかたがないのでこれで頑張ります。

これから向かうすさみエリアは、黒潮の影響を受けやすく、魚影が濃い反面、海況の変化も激しい場所です。
「昨日の南風がどう残っているか」
「今の西風がどれくらい吹いてるか…。」
ハンドルを握りながら、いくつかのポイントを頭の中でシミュレーションし、優先順位をつけていきました。
西風なので和歌山の場合は風裏はあまりないですが、いくつかピックアップし車を走らせました。
このあたりの駆け引きは、現地を見てから最終決定するほかありません。
ポイント到着。少し荒れてる…。
現地に到着したのは14時頃でした。
まずは、当初の予定通り第一候補としていたポイントへ向かいます。
ここは比較的水深が浅いシャローエリアで、大きめの石が絡む海底がフラットなゴロタ場です。
フラットなゴロタ場はサメが多いから嫌なんですがその分、良型のイカも多い気がする…

車を降りて海を覗き込むと、ちょっと波気がありました。
磯際がバシャバシャと音を立てて波打っています。
この波が、前日に吹いた南風による余波なのか、それとも当日吹いている西風の影響なのかは定かではありません。
しかし、浅場においてこれだけの波気があるということは、「底荒れ」を起こしている可能性が高いと判断しました。

釣って釣れない事はないかもしれないけれど、スタート日なので落ち着いてやりたいのが本音なところ
「ん~」
もう少し水深のあるポイントを見に行ってダメならここに戻ってくるか…竿を出さずに移動を決断しました。
第二ポイントの選定理由と「ウネリ」への対策
次に向かったのは、第一ポイントから少し移動した先にある第二のポイントです。
ここは先ほどとは異なり、足元からある程度の水深がある場所です。
水深があれば、多少の波気があっても底の方は安定していることが多く、アオリイカが留まっている可能性があります。
ただ、このポイントには特有の地形的な癖がありました。
岸に平行に海溝(海底の溝)が連なっているため、沖の波がその溝を乗り越えるのでウネリが増幅され磯際まで入ってきています。

足元の岩肌に波が強く当たり、場所によっては白いサラシが広がっています。
正直なところ、ちょっとした「ヒラスズキ日和」でしたw
アジを泳がせる際も、このウネリにラインを取られないよう細心の注意が必要になります。
それでも、底荒れのリスクが高い第一ポイントに比べれば、水深がある分、こちらの方がアオリイカと出会える可能性が高いことと、21時が底(干潮)なので波も落ち着いてくれると思ってこのポイントで釣りすることにしました。
夕マヅメの準備と地磯で使うタックルシステムの紹介

ポイントが決まり、背負子にバッカン・ヤエンケース・スカリ・フィッシングウェアを載せて地磯へと降ります。スカリも10年くらい使っているのでつぎはぎだらけでボロボロ
波の状況をみて足場を確認し、ピトン、アジバッカンを配置して夜釣りが快適にできるように「釣り座」の導線を確認。
日没の17時まではまだ少し時間があります。

目の前の海は相変わらずウネリが残り、岩肌を洗う波音が絶えず響いています。風は予報通り西(正面)から吹いています。幸いなことにそこまで強く吹いていないので、陽が落ちて地表の気温が下がれば風も落ち着いてくるでしょう。
あとは波だけですが、これは潮がひいてくると落ち着くはずです。
すぐに竿を出したい気持ちを抑え、陽が暮れるまで休憩することにしました。
日没待ちの休息と現地の雰囲気
準備をあらかた終え、持参したよもぎ餅とお茶で小休止をとりますw
磯の上で食べる甘味は、なぜこうも美味しく感じるのでしょうか。歳とると余計にうまい。
最近はみたらし団子なども好物になっておじいちゃん化してきました。

西に傾き始めた太陽が海面をキラキラと照らしていますが、その光の下では複雑な潮の流れとウネリが交差しているのが見て取れます。
ポイントにはだーれも居ません。あるのは「静かな磯、騒がしい海」だけ
そんなコントラストをぼんやりと眺めながら、よもぎ餅をほおばりながら、これからの攻め方を整理します。
明るいうちに取り込みに使えそうな足場の低い場所を目に焼き付けておきます。
ボーダレス460MH改とナイロンラインを選択した理由
休憩を終え、タックルの準備に取り掛かります。
今回選択したメインタックルは以下の通りです。
ロッド:シマノ ボーダレス460MH(改)
リール:BB-Xデスピナ C3000(ノーマル)
ライン:USNナイロンライン 3号(蛍光グリーン)
仕掛け:セーフティースナップパワー#8 +カン付きチヌ針4号+ヤエンストッパー
まずロッドですが、ハエ根とウネリがある状況では、できる限りラインをハエ根の先に保持して波の影響を避ける必要があります。
そのため、短尺な磯竿ではなく、取り回しやすく長さがある「ボーダレス4.6mh」をチョイス。
今でこそこの竿をヤエン釣りに流用されてる人も多いですが、私が使いだしたころは「ボーダレスってなに?」みたいな感じでした。この竿は磯竿の長さとルアーロッドの操作性を兼ね備えており、足場の悪い地磯での取り回しにも優れています。
他にもさまざまなロッドがありますので、皆さんも自分に合うロッドを使用し、ヤエン釣りを楽しんで下さい。
次にラインです(テスト使用)
以前はPEラインを使っていましたが、最近ではノットの再構築が必要のない「ナイロンライン」を使っています。ナイロンラインは吸水性があるので劣化しやすいですが、PEラインもコーティングが剥げれば毛羽立ちはあるのでコスパ的にはどっちもどっちかもしれません。
ただ、私の場合、地磯でヤエン釣りをすることが多く、根掛りでラインブレイクを考慮し、ナイロンラインへ変更しました。(年々目も悪くなってきてるし…。)
▼ラインの特徴や強度を深堀りしています▼
リールは使い慣れたレバーブレーキ付きの音出し改造なしの「16デスピナ」。
アジの泳ぎやイカの引きに合わせて、瞬時にラインテンションを調整できるこの機能は、私のヤエン釣りには欠かせません。
そうこうしてると太陽が水平線に近づき、空の色が変わり始めています。
ヤエン釣り開始。電ケミの光が夕闇の地磯に光る!

5・4・3・2・1…17時00ちょうど。
太陽が水平線の向こうへと姿を消し、辺りが薄暗い青色に包まれ始めました。 いよいよ実釣開始です。
磯に打ち付ける波音は相変わらず激しいままですが、もう少しすればおさまってくるでしょう。
このマヅメ時の光量変化は、アオリイカの捕食スイッチが入る最大のチャンスなので、なんとかものにしたいところ。
と、言いつつも、アジバケツの中から手持ちの中で一番小ぶりなアジを選び出しましたw
波気がある状況での第1投目。
まずは様子見も兼ねて、小さめのアジで状況を探ることにします。
アジを優しくキャストし、ベールを返してフリーにする。 糸がスルスルと出ていくのを見送りながら、アジを底へと泳がせます。
第1投。ファーストヒットの感触

ウネリの影響でアジが安定しないかと思われましたが、ナイロンラインの適度な重みが功を奏し、アジは元気に底の方へと潜っていきました。
しばらく待ちます。
デスピナのハンドル2回転し、ググっと穂先を押さえ込む明確な違和感がロッドに表れました。
「来た…?」
ラインを張り気味にして確認すると、グーッという生命感のある重みが伝わってきます。 幸先よく開始早々のアタリです。
寄せの段階ではそこまで重量感はなく、素直に寄ってきます。 慎重にヤエンを送り込み、タイミングを見計らって掛け針を跳ね上げると、無事にフッキング。
上がってきたのは600gほどのアオリイカでした。
サイズはともかく、この荒れ気味の状況で開始早々にボウズを逃れたので、京都からここまで来た甲斐がありました。
ウネリの中でのアジ操作とラインメンディング

1杯目が釣れ、アジを食べるスピードをみてもアオリイカの活性が悪くないことは確認できましたが、やはり海況は厄介です。
沖から押し寄せるウネリが、定期的にラインを大きくさらっていきます。 このまま放置していると、ラインが波に巻かれて岩に擦れたり、アジが不自然に引っ張られて弱ってしまったりするリスクがあります。
そのため、前半は常に手持ちでロッド操作が求められました。
波が来るタイミングに合わせてロッドを高く上げ、ラインを海面から切る。 波が引くタイミングでラインを海面に置く。
この「ラインメンディング」を怠ると、アジへのコンタクトを見失ってしまいます。
ラインカラーを活かし、常にラインを波のトップより上に置くイメージで操作を続けました。 暗闇の中で、波の音とラインのテンションだけに集中する時間が続きます。
深夜のアオリイカとの攻防。月明かりと潮の変化を読みバイトを誘う

この日の干潮時刻は21時。 潮位が下がれば、磯を洗うウネリも少しは落ち着いてくるはずです。 今回は、干潮から上げ潮に転じてしばらく経つ「25時(翌午前1時)」まで竿を出す計画です。
丁度、お月さんが真上に来るのも21時前です。
この前後の時合いを中心に釣ります。
西風から北東風へ。刻々と変わる気象条件
日が暮れてから、それまで吹いていた西風に変化が現れました。 風向きが徐々に北東へと変わり、勢いも弱まっていきます。
あれほど悩まされたウネリでしたが、風向きが変わったことと、潮がひいてきたことでウネリが落ち着いてきました。。 海面のザワつきも少し収まり、アジの泳ぐ波動や、イカが触れてきた瞬間の微細な違和感が、ダイレクトにロッドへ伝わってくるようになります。
「これなら集中できる」
環境が整ったことで、手持ちから置き竿に切り替えました。
「月が真上」を超えるとアタリが減る?夜釣りの傾向

空を見上げると、月が明るく輝いています。 月明かりは底付近から見上げているアオリイカにエサの存在をシルエットとして気付かせる為の強い味方と言われます。
月が昇り切る前、東の空にあるうちは、ポツポツと飽きない程度にアタリが続いていました。 しかし、月が天頂(真上)超えたあたりから、ピタリとアタリが遠のいたのです。
「月が真上を過ぎると食わなくなる」
これは夜釣りをしていると時折遭遇する現象です。
月の軌道と潮の動きがリンクしているのか定かではありませんが、このアタリの少ない時間を丁寧に獲っていく事が釣果をひと伸びさすカギとなります。
アベレージサイズへの悩みと追加の1杯

月が傾き始めると、再び海に生命感が戻ってきました。 待機させていたアジが暴れ出し、アタリがでてきました。(とは言っても1時間に1回あるかないか)
しかし、この日はサイズに恵まれませんでした。 乗ってくるのはメスが多く、サイズも小ぶりな600gから700gほどのサイズばかり。 時折、重量感のある引きを見せる個体も混じりましたが、慎重に寄せても「キロあるかないか」といったサイズに留まります。
もう少し良型を期待していましたが、この時期は仕方ないのかもしれませんね、贅沢は言えません。 ポツポツと拾い釣りながら、数を重ねていきました。
ローラーヤエンは不要?独自のヤエン理論と取り込み

アタリがあってから取り込みに至るまでのプロセス。 ここには釣り人それぞれの流儀や美学が色濃く反映されます。
特にヤエン釣りにおいては、「いつヤエンを入れるか」という判断が最大の分岐点となります。 早めに入れて勝負を急ぐ人もいれば、十分に食わせてから入れる人もいる。
正解はありませんが、基本、私は見える所までアオリイカを寄せてヤエンを打つスタイル。
つまり「限界まで寄せてから仕留める」というアプローチを徹底しています。
限界まで寄せるのでローラーヤエンは不要?
私の場合、アオリイカを極限まで手元に寄せます。 理想は、ヘッドライトの灯りで海中にイカの姿が目視できる距離。
そこまで寄せて初めて、ヤエンをラインにセットします。
ここまで寄せきってしまうと、ラインの角度はかなり急になります。 そうなると、滑りの良さを売りにした「ローラー付きヤエン」でなくとも、重力を利用してスルスルと滑り落ちていきます。
だから私は、「ローラーヤエンは必ずしも必要ではない」と考えています。
もちろん、沖で掛けなければならない状況ではローラーの恩恵は絶大ですが、じっくりと寄せられる状況であれば、シンプルな自作ヤエンやノーマルヤエンで十分事足ります。
信頼の「カツイチギャフ」で決めるランディング
ヤエンが掛かり、イカが墨を吐いて観念したところで、最後の難関であるランディングが待っています。 ここで焦ってバラしてしまっては、これまでの苦労が水の泡です。
取り込みには、長年信頼を置いている「カツイチ」のギャフを使用します。 このギャフは針先が鋭く、力がダイレクトに伝わる為、掛かりが良いのが特徴です。
ウネリで海面が上下する難しい状況でしたが、タイミングを見計らって一撃で掛け、そのままタモの柄をたたんで取り込みます。
ギャフ掛けの瞬間、手に伝わる確かな重量感。 この感触こそが、一連のプロセスの完結を告げる合図です。
淡々と、しかし確実に。 自分の信じる道具と理論で一杯ずつ積み重ねていく事に、私なりの世界観があるんですよね。なので、1ハイでも10ハイでもどちらも楽しいのです。
まとめ:和歌山すさみ地磯でのヤエン釣果は7ハイでした。

予想通り、23時を回った頃からアタリがパタッと止まりました。 海は静けさを取り戻し、先ほどまで騒がしかったアタリも鳴りを潜めます。
予定終了時刻の25時(翌1時)まではまだ時間がありますが、この様子だとアタリは期待できません。 「残り時間でポツポツと拾えれば御の字」 そう割り切り、ここからは撤収に向けた準備と、並行して釣果の処理を進めていくことにしました。
潮止まりの静寂と現地での下処理ルーティン
アタリが遠のいたこのタイミングを利用して、スカリに入れておいたアオリイカの処理を行います。 私はいつも、帰宅後の手間を省くために現地で下処理を済ませてしまうのがルーティンです。
使用している「ドレス」のスカリからイカを取り出し、ハサミを入れて内臓とエラ、目玉を取り除きます。 こうすることで、クーラーボックス内での墨汚れを防げるだけでなく、鮮度を保ったまま持ち帰ることができます。
何より、疲れ切って帰宅した後に台所を汚さずに済むのが最大のメリットです。
この時点で、スカリに入っていたのは6杯。 サイズは400g、500gといった小型から、キロあるかないかといったサイズまで。 手早く処理を済ませ、ジップロックに入れて持って帰る準備をします。
ラストに来た貴重なアオリイカ
片付けを進めながら、最後に泳がせていたアジの様子を見に行きます。 「もう終わりかな」 そう思いながら竿を手に取ると、ズシリとした重みが乗っていました。
まさかの土壇場での追加です。 最後の1匹のアジが、執念でアオリイカを連れてきてくれました。
これを慎重に取り込み、トータルの釣果は7杯でストップフィッシング。 (集合写真は解体前の6杯のみ撮影しました)
今回はウネリと波気という難しいコンディションでしたが、場所選びと潮の読み、そしてタックル選択が噛み合ったことで、なんとか形にすることができました。 サイズこそ伸び悩みましたが、買えば高級なアオリイカが7ハイも釣れたので、これで正月用に親戚に配る事ができそうです。



コメント
こんにちは
初コメさせていただきます。
「月明かりは底付近から見上げているアオリイカにエサの存在をシルエットとして気付かせる為の強い味方と言われます。」と書かれていると言うことは、イカは下からアジを見つけていると考えられるのですね。今までは、アジを沈まさないといけないとおもい、夜でもオモリを打ってました…。
今後は今回の記事を参考にして、夜釣りではオモリは控えたいと思います。
こちらは伊豆ですが、今後も楽しみに読ませて頂くので頑張って下さい!
地磯の狼さん、コメントありがとうございます。
夜釣りではアオリイカよりもアジの方が表層を泳いでいることが多く、下から海面を見ることによって
アジが影となりシルエットでアピールできるという考え方があるようです。
これを聞いた時、私も「なるほどな」思いました。
ケースバイケースではあるかと思いますが、一つの参考としてとらえて頂けると幸いです。